1/1
はなし帖 / 宇野信夫
¥700 税込
残り1点
別途送料がかかります。送料を確認する
宇野信夫/著
文藝春秋
1979年初版、四六判
昭和の黙阿弥こと、宇野信夫の随筆集。
『その姉の臨終に、親類や近所の人が集まった。姉の枕元にしがみついて泣いているのは、隣の歯医者の娘で、姉とは同い年で仲よしであった。年の瀬の夜なかの空気はしんしんと冷えて、床柱がピシリと音をたてた。すると娘のそばにいたお婆さんが「羽織をきておいでよ、風邪をひくよ」と娘の耳元で囁いた。その声は私の耳にも入った。私は子供心にもそのお婆さんを憎んだ。以来、このお婆さんの顔を見ると不愉快であった。今は私もそのお婆さんと同じくらいの年齢になった。私の渡ってきた世の中は、みんなこの「羽織をきておいでよ」であるということを教えてくれた。お婆さんはただ正直な人だったのである』
-
送料・配送方法について
-
お支払い方法について
¥700 税込
最近チェックした商品
同じカテゴリの商品
セール中の商品
その他の商品